「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の60歳以降の受け取り方法は非常に難解です。
今回は、iDeCoの受け取り方法について税金を最小化する方法について考えてみたので紹介します。
iDeCoのさまざまな受け取り方法を学んで、自分にあった、最適な選択を考えてみましょう。
この記事を読めば、iDeCoの受け取り方法について理解が深まり、税金を最小化する方法を学べますよ。
私は2019年からNISAに取り組み、現在、1000万以上の投資を行っています。iDeCoについても2022年から運用しています。
今回はiDeCoの受け取り方法について解説します。
このブログでは特に子育て世帯にむけて、資産形成の方法を発信しています。
iDeCoの基本的な仕組み
iDeCoの基本的な仕組みについては過去の記事で詳しく解説しています。
以下の記事を参考にしてください。
ざっくりまとめると以下の通り。
- 掛け金の全額が所得控除(差し引かれる)
- 運用益が非課税
- 60歳以降でしか引き出せない
- 人によって掛金が違う
- 運用会社や運用商品、掛金は自分で決める
- 受け取り時には所得扱いとなり税金がかかる
iDeCoの受け取り方法について
iDeCoを積み立てる時には掛金が全額、所得控除となり、税金がかかりませんが、
受け取り時に「所得」扱いとなり税金がかかります。
この税金を抑えるために最適な受け取り方法を選ぶ必要があります。
なお、受け取り方法の最適解は人によって異なるため、1つの正解はなく、各々が自分の状況から判断しなければなりません。
受け取り方法によって税金が数十万かわることもあるので注意が必要です。
60歳以降に受け取る際には、「一時金」として受け取るか「年金」で受け取るか、さらにそれを組み合わせた「併給」から選択できます。
- 一時金:一括で受け取る
- 年金:受け取り期間を5年以上20年以下の範囲で選択し、年金形式で受け取る
- 併給:一時金と年金を組み合わせたもらい方
「一時金」で受け取る場合
「一時金」として受け取る場合には、退職所得控除が適用されます。
この退職所得控除を利用することで、大部分、もしくは全額を非課税で受け取れる可能性があり、節税効果が大きいのが特徴です。
退職所得控除とは
退職所得控除?なんのこと?
日本では退職金に対してかなり大きな控除(所得の計算上、差し引かれる額)があるんだよ。
計算式と例を使って説明するね。
退職所得控除は勤続年数によって下の表の通りとなります。
勤続年数(=A) | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下 | 40万円×A |
20年超 | 800万円+70万円×(Aー20年) |
見ての通り、20年以上働くとボーナスステージ突入で控除額が70万円になります。
ここで例を使って退職所得とその所得税の計算をしたいと思います。
○例えば、Bさんは大卒で23歳から60歳までの38年働きました。退職金は3000万円でした。
その場合の退職所得控除は800+(70×18)=2060万円になります。
Bさんの退職所得は3000万円から2060円を引いてさらに2分の1した470万円となります。
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税を計算して良いこととなっています。(申請が必要)
所得税は下の表の通りとなります。
退職所得が470万円となるため、退職金にかかる所得税は470万円×0.20ー42万7500円=51万2500円となります。
令和6年分所得税の税率表[求める税額=A×BーC]
A 課税退職所得金額 | B 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円〜194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円〜329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円〜694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円〜899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円〜1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円〜3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円〜 | 45% | 479万6000円 |
税金については上記の所得税の他に復興特別所得税2.1%と住民税10%がかかります。
復興特別所得税:51万2500円×0.021=1万762円、住民税470万円×0.1=47万円
税金の合計は51万2500円+1万762円+47万円=99万3262円
iDeCo受け取り時の税金計算
先ほど説明した退職金と同じようにiDeCoの一時金受け取りも退職金として退職所得控除が適用されます。
iDeCoの場合、勤続年数の代わりに掛け金を拠出した年数がAとなります。
同じように例を使ってiDeCo引き出し時の税金を計算します。
○例えば、CさんはiDeCoを39歳から60歳までの21年間積み立てました。iDeCoの資金は1000万円でした。
その場合の退職所得控除は800+(70×1)=870万円になります。
Cさんの退職所得は1000万円から870円を引いてさらに2分の1した65万円となります。
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税を計算して良いこととなっています。(申請が必要)
税金の税率は上の表の通り5%となります。
退職所得が65万円となるため、iDeCo受け取り時にかかる税金は65万円×0.05=3万2500円となります。
※税金は上記の所得税の他に復興特別所得税、住民税がかかりますが、ここでは省略します。
一時金として受け取れば、1000万円受け取りに0.325%の3万円程度しか所得税がかからないことが分かりましたね。
またiDeCoの資金が870万円以下であれば所得税は0円となります。
この計算からわかるようにiDeCoは「一時金」として受け取った場合、税金が大幅に減ることが分かります。
注意!退職金と同時にiDeCoを受け取ると税金が増えてしまう
ただし、一時金受け取りには注意点があります。
退職金とiDeCoの一時金を同時に受け取ると合算されるため、退職所得が多くなり、税金が増える
例えば、先ほど退職金所得の例にだしたBさんが退職金3000万とは別にCさんのようにiDeCo(資産1000万円)をやっていたとします。
60歳時に退職金3000万円とiDeCoの1000万円を同時に受け取ると退職金は合算され、4000万円になります。
退職金控除額は退職金とiDeCoである一定期間を空けないと別で使えないので2060万円しかなく、結果として税金が増えてしまうのです。
このように退職金とiDeCoの受け取り時期を調整しないとせっかくの退職所得控除が使えないので注意が必要です。
但し、退職金控除の1/2が適用されるので退職所得課税対象は500万円となり、節税効果はある程度あることが分かりますね。
「年金」で受け取る場合
一時金ではなく、「年金」形式で受け取ると、雑所得扱いとなり、税金がかかります。
ただし、退職金控除と同様に雑所得にも控除があり、公的年金などと併せて公的年金等控除が適用されます。
公的年金等控除の表は以下の通り。
年齢 | 公的年金収入 | 公的年金に関わる雑所得 |
---|---|---|
65歳未満 | 〜60万円以下 | 0円 |
60万円超〜130万円未満 | 収入-60万円 | |
130万円以上〜410万円未満 | 収入×0.75-27.5万円 | |
410万円以上〜770万円未満 | 収入×0.85-68.5万円 | |
770万円以上〜1000万円未満 | 収入×0.95-145.5万円 | |
1000万円以上 | 収入-195.5万円 | |
65歳以上 | 〜110万円以下 | 0円 |
110万円超〜330万円未満 | 収入-110万円 | |
330万円以上〜410万円未満 | 収入×0.75-27.5万円 | |
410万円以上〜770万円未満 | 収入×0.85-68.5万円 | |
770万円以上〜1000万円未満 | 収入×0.95-145.5万円 | |
1000万円以上 | 収入-195.5万円 |
65歳未満は60万円まで、65歳以上は110万円まで非課税
65歳以上で年金額が少ない方であれば、110万円までは非課税となるため、iDeCoの受け取り方法を「年金」として受け取ることも選択肢としてアリかと思います。
例えば、自営業で国民年金のみの方の場合、年金額は一律で年額80万円程度となるため、iDeCoを年額30万円年金でもらえば、すべて非課税で受け取ることができます。
会社員で厚生年金に加入している方は平均年金額が年額170万円程度になるため、110万円までの控除を使いきっておりiDeCoを「年金」で受け取ると110万円を超える金額に税金がかかります。
iDeCoを活用している方は総じて金融リテラシーの高い方であるため、年金収入も高い人が多いと思います。
年金収入が多い方は「年金」で受け取ると税金がかかるため、基本的には2分の1の退職金控除が使える「一時金」受け取りとするのがいいでしょう。
「併給」で受け取る場合
先ほど説明した「一時金」受け取りと「年金」受け取りを併用できるのが「併給」という受け取り方法です。
この受け取り方法が1番おすすめです。
「併給」を選択することで、「一時金」受け取りと「年金」受け取りのいいとこ取りができます。
具体的には退職金控除と公的年金控除を使い倒しましょう。
「年金」受け取りの項目で紹介した通り、65歳未満は60万円まで非課税で受け取れる「公的年金控除」があります。
この「公的年金控除」を有効活用しましょう。公的年金は基本的には65歳からの支給になるので60歳から64歳までの期間は年金支給がありません。そのためこの5年間にiDeCoを60万円ずつ受け取れば非課税でまるまる受け取ることができます。
この「年金」受け取りで60万円×5年=300万円受給し、300万円を除いた額を「一時金」受け取りとし、退職金控除を適用することで税負担を最小化することができます。
iDeCoと退職金の受け取り時期の調整方法
iDeCoと退職金の受け取り時期を調整することで税金を減らすことができます。
以下の調整を行えば、「退職金」と「iDeCoの一時金」の両方別で、退職金控除を使えるようになります。
- 5年ルールを意識した調整
- 20年ルールを意識した調整
5年ルールを意識した調整
退職控除には5年ルールがあります。
5年ルール:iDeCo→退職金の順番で5年あけて受け取れば、退職金控除が2回満額適用されるルール
(その年の前年4年以内の重複期間は退職控除が適用されない)
例えば、iDeCoの一時金を60歳で受け取り、退職金は65歳に受け取るといった調整を行うことで、退職所得控除をiDeCoの一時金、退職金受け取り時に両方満額で使えることになります。
この調整方法を使えば、iDeCoの税金をほぼ0円にすることができますね。
ルールを意識せず、iDeCoの一時金を60歳で受け取り、退職金を64歳に受け取った場合には、iDeCoの拠出期間と勤続期間は重複期間とみなされ、退職金に対し、4年間分の退職金控除しか使えなくなります。
注意点として退職→iDeCoの順番では適用できないという点です。60歳で退職したい人は使えない制度になります。
20年ルールを意識した調整
早期退職を考えている人には20年ルールを意識する調整も有効でしょう。
20年ルール:退職金→iDeCoの順番で20年あけて受け取れば、退職金控除が2回満額適用されるルール
(その年の前年19年以内の重複期間は退職控除が適用されない)
iDeCoの受給開始年齢は75歳まで延長できるため、退職金を55歳までにうけとり、75歳でiDeCoを受け取れば、満額で退職金控除が使えます。
ただし、75歳までiDeCoの受け取りを遅らせるのは多くの人にとって現実的ではないし、55歳までに早期退職する方も少数ですのでこの調整方法を使用する人は限定的になると思います。
5年ルールと同様に退職金を受け取ってから19年以内にiDeCoの一時金を受け取ると勤続期間と拠出期間の重複期間はiDeCoの受け取りの際に退職金控除が適用されないので注意が必要です。
iDeCoの最適な受け取り方法
いままで説明してきた「受け取り方法の選択」や「受け取り時期の調整」などを踏まえて所得税を最小化する最適な受け取り方法を考えてみましょう。
退職時期別の最適な受け取り方法
まずは退職する時期によって最適な受け取り方法について考えたいと思います。
(ここでは所得税のみを評価し、住民税など他の税金は省略します。)
前提条件
・「iDeCoの拠出開始」と「会社の入社」の年齢は一般的な大卒社員の23歳とします。
・60歳時点の退職金は大企業大卒の人の退職金平均額の2200万円とします。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査」)
・55歳時点の退職金は0.8倍の1760万円、65歳時点の退職金は1.2倍の2640万円とします。
・iDeCoの資産は1000万円とします。
もう一度、所得税の税額表を載せておきます。
令和6年分所得税の税率表[求める税額=A×BーC]
A 課税退職所得金額 | B 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円〜194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円〜329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円〜694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円〜899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円〜1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円〜3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円〜 | 45% | 479万6000円 |
55歳で早期退職したい方
55歳で退職する場合、55歳でもらう退職金に対して1回目の退職所得控除が適用されます。
⭕️退職金受け取り時の所得税の計算
退職所得控除は23歳〜55歳の33年間が適用され、800+(70×13)=1710万円
退職所得:(1760ー1710)×1/2=25万円
所得税:25万円×0.05=1万2500円
退職金を先に受け取る場合、20年ルールが適用され、75歳までiDeCoでの退職金控除が満額まで使えません。
しかし、満額ではないですが、iDeCoの一時金受け取りで退職金控除が適用されます。
具体的には60歳〜64歳の間、非課税額の60万円×5年=300万円を「年金」として受け取り、1000万円から300万円を差し引いた残りの700万円を「一時金」として受け取る方法が最適です。
⭕️iDeCo受け取り時の所得税の計算
「一時金」受け取りの退職所得控除は56歳〜60歳の5年間が適用され、40×5=200万円
退職所得:(700ー200)×1/2=250万円
所得税:250万円×0.2ー42万7500円=7万2500円
上記の場合、退職金とiDeCoの一時金にかかった所得税の合計は1万2500円+7万2500円=9万円となりました。
60歳で退職したい方
この場合、60歳で退職金をもらうため、iDeCoの「一時金」受け取りは退職所得控除を満額で使えません。
55歳で退職したい方と同様、具体的には60歳〜64歳の間、非課税額の60万円×5年=300万円を「年金」として受け取り、1000万円から300万円を差し引いた残りの700万円を「一時金」として受け取る方法が最適です。
⭕️iDeCo+退職金受け取り時の所得税の計算
「一時金」受け取りで退職所得は退職金2200万円と同時に受け取るため、
退職所得控除は23歳〜60歳の38年間が適用され、800+(70×18)=2060万円
退職所得:(700+2200ー2060)×1/2=420万円
所得税:(420万円×0.2)ー42万7500円=41万2500円
65歳で退職したい方
この場合は5年ルールを意識するだけで最適な受け取り方法ができます。
上記の場合、iDeCoの退職金控除は800+(70×18)=2060万円となるため、
iDeCoの一時金受け取りに税金はかかりません。
⭕️退職金受け取り時の所得税の計算
5年ルールにより退職金控除額は勤続年数43年間満額で使えるので800+(70×23)=2410万円
退職所得:(2640ー2410)×1/2=115万円
所得税:(115万円×0.1)ー9万7500円=1万7500円
退職金の大小による最適な受け取り方法
次に退職金の大小による最適な受け取り方法について考えてみましょう。
前提条件
・「iDeCoの拠出開始」と「会社の入社」の年齢は一般的な大卒社員の22歳とします。
・iDeCoの資産は1000万円とします。
・退職は60歳とします。
退職金が全くない方
退職金がなければ、iDeCoの「一時金」受け取りで退職控除を満額使用できます。
上記の場合、iDeCoの退職金控除は800+(70×18)=2060万円となるため、
iDeCoの受け取りには税金はかかりません。
退職金が1000万円の方
中小企業の平均退職金額は約1091万円とのことでこのケースが類似すると思います。(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事業(令和4年版)」)
上記の場合、iDeCoの退職金控除は800+(70×18)=2060万円となるため、
iDeCoと退職金を合わせた2000万円の受け取りに税金はかかりません。
退職金が4000万円の方
退職金が4000万円と平均の2倍近くある方はどうすればいいのでしょう。
具体的には60歳〜64歳の間、非課税額の60万円×5年=300万円を「年金」として受け取り、1000万円から300万円を差し引いた残りの700万円を「一時金」として受け取る方法が最適です。
⭕️iDeCo受け取り時の所得税の計算
「一時金」と退職金4000万円と同時に60歳で受け取るため、
退職所得控除は23歳〜60歳の38年間が適用され、800+(70×18)=2060万円
退職所得:(700+4000ー2060)×1/2=1320万円
所得税:1320万円×0.33ー153万6000円=282万円
上記の方法以外にも65歳までiDeCoを拠出して、65歳で「一時金」受け取りの方がさらに所得税が最小化しますが、iDeCoの受け取りが5年遅れるのでおすすめしません。
悪い例:税金がかかる受け取り方法
悪い例としてなにも考えずに受け取る場合どれくらい税金がかかるか計算したいと思います。
税金を最小化する最適な受け取り方法と比較してみましょう。
前提条件
・「iDeCoの拠出開始」と「会社の入社」の年齢は一般的な大卒社員の23歳とします。
・60歳時点の退職金は大企業大卒の人の退職金平均額の2200万円とします。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査」)
・iDeCoの資産は1000万円とします。
・退職は60歳とする。
・年金受給額は平均の年間170万円とする。
この場合、どれくらいの所得税がかかるでしょうか?
まず60歳で受け取った退職金2200万円にかかる所得税を計算します。
⭕️退職金受け取り時の所得税の計算
退職所得控除は23歳〜60歳の38年間が適用され、800+(70×18)=2060万円
退職所得:(2200ー2060)×1/2=70万円
所得税:70万円×0.05=3万5000円
次にiDeCoの「年金」受け取りにかかる所得税を計算します。
年金170万円とあわせると年額270万円の収入となります。
もう一度、公的年金等控除の表を載せておきます。
年齢 | 公的年金収入 | 公的年金に関わる雑所得 |
---|---|---|
65歳未満 | 〜60万円以下 | 0円 |
60万円超〜130万円未満 | 収入-60万円 | |
130万円以上〜410万円未満 | 収入×0.75-27.5万円 | |
410万円以上〜770万円未満 | 収入×0.85-68.5万円 | |
770万円以上〜1000万円未満 | 収入×0.95-145.5万円 | |
1000万円以上 | 収入-195.5万円 | |
65歳以上 | 〜110万円以下 | 0円 |
110万円超〜330万円未満 | 収入-110万円 | |
330万円以上〜410万円未満 | 収入×0.75-27.5万円 | |
410万円以上〜770万円未満 | 収入×0.85-68.5万円 | |
770万円以上〜1000万円未満 | 収入×0.95-145.5万円 | |
1000万円以上 | 収入-195.5万円 |
⭕️iDeCo受け取り時の所得税の計算
60歳〜64歳の5年間の雑所得:270万円×0.75ー27.5万円=175万円
65歳〜69歳の5年間の雑所得:270万円ー110万円=160万円
雑所得の税率:195万円まで一律で5%
前半の5年間の所得税は175万円×0.05=8万7500円/年
後半の5年間の所得税は160万円×0.05=8万円/年
10年間の所得税の合計は(8万7500円×5)+(8万円×5)=83万7500円
退職金とiDeCoの所得税合計は3万5000円+83万7500円=87万2500円
ここで税金を最小化した最適な受け取り方法(60歳で退職したい方の例)と悪い例でかかる所得税を比較してみましょう。
受け取り方法 | 所得税 | 差額 |
---|---|---|
最適な受け取り方法 | 41万2500円 | 46万円 |
悪い例 | 87万2500円 |
以上のように、何も考えずにiDeCoの受け取り方法を選択すると2倍以上の税金がかかり、その額が46万円にもなるとのことが分かりましたね。
今回は所得税のみの比較をしましたが、住民税やその他の税金を考えるともっと差額は大きくなるでしょう。
iDeCoの制度は難解ですが、理解して税金がかからないように自分にあった最適な受け取り方法を選択する必要があります。
まとめ:iDeCoの最適な受け取り方法
以上、iDeCoの受け取り方法から最適な受け取り方法まで説明しました。
受け取り方法は以下の3つから選択できます。
- 一時金:一括で受け取る
- 年金:受け取り期間を5年以上20年以下の範囲で選択し、年金形式で受け取る
- 併給:一時金と年金を組み合わせたもらい方
またiDeCoを「一時金」として受け取る場合には以下のルールを意識することで退職所得控除が大きくなります。
- iDeCo→退職金の順番:5年ルールを意識した調整
- 退職金→iDeCoの順番:20年ルールを意識した調整
また「受け取り方法の選択」や「受け取り時期の調整」などを踏まえて所得税を最小化する最適な受け取り方法をかんがえました。
退職時期別のiDeCoの最適な受け取り方法は以下の表の通り。
退職時期 | 最適な受け取り方法 | 所得税 |
---|---|---|
55歳 | 併給 | 9万円 |
60歳 | 併給 | 41万2500円 |
65歳 | 一時金 | 1万7500円 |
退職金の大小によるのiDeCoの最適な受け取り方法は以下の表の通り。
退職金 | 最適な受け取り方法 | 所得税 |
---|---|---|
0円 | 一時金 | 0円 |
1000万円 | 一時金 | 0円 |
4000万円 | 併給 | 282万円 |
iDeCoの受け取り方法を考慮しない場合、下の表のように46万円の差が生まれます。
受け取り方法 | 所得税 | 差額 |
---|---|---|
最適な受け取り方法:併給 | 41万2500円 | 46万円 |
悪い例:年金 | 87万2500円 |
これまで説明したようにiDeCoの受け取り方法はよく考えないと何十万円もの税金を損してしまう、非常に難しい制度です。
ただし、この受け取り方法だけ間違えなければ、現役時代の節税や非課税投資などメリットがたくさんある制度です。
この記事を参考に自分にあった最適な受け取り方法を考えてみてくださいね!
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