高配当ETFとして根強い人気を持つSPYD(SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF)。 配当利回りの高さに惹かれて投資する人も多いですが、実は注意すべき点も少なくありません。
本記事では、SPYDをおすすめしない理由を詳しく解説し、後悔しないための判断材料を提供します。
本記事では、SPYDをおすすめしない理由とそれでも向いている人について詳しく解説します。

はじめまして、矢五郎です。
私は2019年からNISAに取り組み、現在、1,000万円以上を運用しており、含み益は500万円を超えています。
SPYDについても下の画像の通り投資をしています。


SPYDとは?基本情報と人気の理由


SPYD(SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF)は、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500の構成銘柄のうち、配当利回りの高い上位80銘柄に均等分散で投資するETFです。
項目 | 内容 |
---|---|
ティッカー | SPYD |
運用会社 | State Street Global Advisors(世界有数の資産運用会社) |
資産残高 | 約70.8億ドル |
設定年 | 2015年10月 |
経費率 | 0.07% |
配当利回り | 約4〜5%(タイミングにより変動) |
このETFの大きな特徴は、時価総額や業績などではなく、「配当利回りの高さ」だけを基準に構成銘柄が選ばれている点です。そして、その選ばれた銘柄は全て均等比率(約1.25%前後)で保有されているため、特定の大型企業に偏らない分散投資が可能です。
インカムゲイン(配当収入)を重視する投資家にとって、手軽に高配当銘柄に広く分散投資できることから人気があります。また、四半期ごとに安定的な分配金が支払われる点も、年金代わりや副収入を期待する層から支持されている理由です。
ただし、銘柄選定の基準が単純であるがゆえに、景気に左右されやすいセクターへの偏りや、業績が芳しくない企業が含まれる可能性も高くなり、リスクも伴います。
人気の高さとは裏腹に、安定した成長を求める長期投資家にとっては注意点も多いETFです。
SPYDをおすすめしない理由5選


SPYDをおすすめしない理由は以下の5つです。
- 減配リスクがあり、配当金が安定しない
- 景気敏感セクターに偏っている
- 銘柄選定ロジックが単純すぎる
- 株価の成長が期待しづらい
- 為替リスクがある
1. 減配リスクがあり、配当金が安定しない
高配当ETF=安定配当というイメージがあるかもしれませんが、SPYDはその限りではありません。
過去10年間の配当推移は以下の通り。
SPYDの配当は過去10年間でみると減配も多く、安定していないというのが現状です。
(※SPYDは設定日が2015年10月であり、2015年は12月しか配当がないため、2015年は除外しています。)
たとえば2020年、コロナショックの影響でSPYDは年間分配金を1.75ドルから1.64ドルへと約6%減配しました。
さらに、2023年も年間分配金は1.82ドルと、2022年(1.98ドル)と比較して約8%減配しました。


年度 | 年間配当金 | 増配率 |
2015年 | – | – |
2016年 | $1.51 | – |
2017年 | $1.42 | +13.1% |
2018年 | $1.62 | -6.4% |
2019年 | $1.75 | +8.0% |
2020年 | $1.63 | -6.3% |
2021年 | $1.55 | -4.9% |
2022年 | $1.98 | +27.6% |
2023年 | $1.82 | -8.0% |
2024年 | $1.87 | +2.2% |
背景には、機械的な銘柄入れ替えによって業績が不安定な企業も組み込まれる点や、景気敏感セクターへの依存が高いことが挙げられます。
安定したインカム収入を期待する投資家にとっては、このような配当の不安定さはリスクとなります。
ただし、増配率は平均すると年間+3.16%と、長期的には増配傾向にある点は安心材料です。その点は安心できるかなと思います。


2. 景気敏感セクターに偏っている
SPYDは利回りだけで銘柄を選ぶため、エネルギー・金融・不動産など景気敏感セクターに大きく偏っています。
2025年5月2日時点のセクター比率は以下の通りです。


景気敏感セクター(不動産・金融・エネルギー・素材・一般消費財など)が全体の約6割を占めており、ディフェンシブセクター(公益事業・生活必需品・ヘルスケア)は約4割にとどまります。
そのため景気後退局面では景気敏感セクターが大きく下落し、ETF全体のパフォーマンスが悪化するリスクがあります。
VTI(米国全体の株式市場を網羅するETF)と比較しても、SPYDは景気敏感株の比率が明らかに高く、情報技術などの成長セクターがほぼ含まれていないため、景気や市場環境に左右されやすい構造になっています。
景気敏感セクター比率 | SPYD | VTI |
---|---|---|
不動産 | 23.6% | 2.8% |
金融 | 13.6% | 12.2% |
エネルギー | 6.8% | 3.8% |
素材 | 4.3% | 1.6% |
一般消費財 | 3.9% | 14.2% |
コミュニケーションサービス | 4.4% | 2.2% |
合計 | 56.6% | 36.8% |
3. 銘柄選定ロジックが単純すぎる
SPYDは年2回のリバランスを行いますが、SPYDの銘柄選定ルールは非常にシンプルで、S&P500構成銘柄のうち、配当利回りの高い上位80社を対象に構成されます。
このルールは銘柄の入れ替えを抑制し、コストや売買の頻度を低減するメリットがありますが、一方で以下の問題点があります。
- 業績や財務状況を考慮せず、配当利回りだけで選定される
- 株価の一時的な下落で利回りが上昇した企業が含まれやすい
- 業績が悪化しても、定量ルールにより銘柄がすぐには除外されない
- 最新の企業パフォーマンスが構成比率に即時反映されにくい
このため、構成銘柄の業績や財務体質を十分に考慮しておらず、質の低い企業がポートフォリオに残るリスクがあります。
4. 株価の成長が期待しづらい
SPYDは高配当を優先する構成のため、成長株が含まれにくく、長期的な株価上昇にはあまり期待できません。
例えば、設定来の年平均リターンは約8.6%(2015年11月〜2025年5月)であり、同期間のS&P500(VOO:約13%)と比較して大きく見劣りします。


これは、SPYDに情報技術やヘルスケアなど、米国株全体の成長を牽引してきたセクターがほとんど含まれていないためです。また、選定基準が「高利回り」重視であるため、成長よりも成熟・停滞フェーズにある企業が中心になります。
キャピタルゲイン(株価の値上がり)を重視したい投資家にとっては、不向きといえるでしょう。
5. 為替リスクがある
SPYDは米国ETFであるため、円建てではなくドル建て資産です。
- 配当もドルで支払われるため、円高局面では実質的な利回りが目減り
- 為替手数料や両替の手間もかかる
たとえば、1ドル=130円から1ドル=110円へ円高が進んだ場合、円換算での配当金は約15%も目減りすることになります。
長期保有を前提にするなら、このリスクはしっかり認識しておく必要があります。
他の人気高配当ETFとの比較


高配当ETFとして人気の他のETF(VYM、HDV)との比較をしてみました。
各ETFの特徴
ETF名 | 配当利回り(目安) | 配当利回り(2025年5月6日) | 主な特徴 |
---|---|---|---|
SPYD | 約4〜5% | 4.56% | セクター偏重・均等加重型。景気敏感株が多く、減配や価格変動のリスクが高い |
VYM | 約3% | 2.97% | 時価総額加重型。大型優良企業を中心に構成され、安定した成長と分配が期待される |
HDV | 約3.5% | 3.56% | 財務健全性を重視したスクリーニング。ディフェンシブな銘柄が多く、下落耐性が高め |
VYMはジョンソン&ジョンソンやマイクロソフトなどの大型株が含まれており、安定性と成長性のバランスに優れています。 HDVはエクソンモービルやP&Gといった財務の健全な企業に重点を置き、配当の安定性が比較的高いとされています。
一方、SPYDは、利回りだけを基準に銘柄を選定するため、企業の成長性や財務健全性が必ずしも反映されないという欠点があります。
目的に応じて、これらのETFを比較・組み合わせて使い分けるのが賢明です。
リターンとボラティリティの比較
SPYDが設定された2015年11月〜2025年5月の期間における、主要な高配当ETF3種のリターンとボラティリティ(価格変動性)を比較してみましょう。


この比較からも、SPYDはリターンでVYMに劣る一方、価格の変動幅(ボラティリティ)は最も大きくなっています。つまり、リスクを多く取っているわりにリターンが抑えられているという特徴があります。
安定性と成長性のバランスを求める投資家にとっては、VYMやHDVの方が魅力的に映るかもしれません。
それでもSPYDが向いている人は?


SPYDは万人向けではありませんが、以下のようなケースでは一考の余地があります。
1. 高配当利回りを重視し、配当金生活を目指している人
減配リスクを許容したうえで、配当金生活を目指している人にとって、SPYDの高配当利回りは魅力的です。
SPYDの配当金については以下の記事を参考にしてください。月20万貰う場合、7000万円以上の資産が必要です。


2. 景気回復局面に積極的にリスクを取りたい人
SPYDは景気敏感株が多いため、景気拡大期には株価の上昇が期待できる可能性があります。タイミングを重視した投資スタイルに向いています。
3. 他のETFと組み合わせて補完的に使いたい人
VYMやHDVといったETFを中心に据えつつ、SPYDをスパイス的に取り入れて利回りを底上げしたいという目的であれば有効に活用できる可能性があります。VYMやHDVとの併用によって分散効果を狙いつつ、補完的にSPYDを検討する場合には意味があります。
まとめ:高配当に惑わされず、冷静な判断を


以上、SPYDをおすすめしない理由をまとめました。SPYDは一見魅力的な高配当ETFに見えますが、実際には以下のようなリスクがあります。
- 減配リスクがあり、配当金が安定しない
- 景気敏感セクターに偏っている
- 銘柄選定ロジックが単純すぎる
- 株価の成長が期待しづらい
- 為替リスクがある
特に、長期的な資産形成を目指す方にとっては、配当利回りの高さだけでなく、安定性や将来の成長性も考慮すべき重要な要素です。
「高配当=安心」と短絡的に考えるのではなく、本記事で紹介した他のETF(VYMやHDVなど)との比較や、自身の投資目的に照らした検討が不可欠です。
安易に高配当に飛びつかず、冷静にリスクとリターンを天秤にかける姿勢が、後悔しない投資判断につながるでしょう。
最後にまだ証券口座を開設していない方には
取扱商品数の多さ、取引手数料の安さがトップクラスのSBI証券、または楽天証券がおすすめです。
この機会にぜひ検討してみてくださいね。
まだNISA口座を開設していない人にはSBI証券と楽天証券のどちらかが断然おすすめ!
SBI証券 | 楽天証券 | |
---|---|---|
口座開設数 | 1245万2千 | 1020万 |
NISA口座 | 476万 〜2024年3月 | 524万 〜2024年1月 |
取扱商品数 | 2575件※ | 2569件※ |
取引手数料 | 0円〜 | 0円〜 |
クレカ積立 | 0.5〜5.0% 三井住友カード | 0.5〜1.0% |
単元未満株 | 対応(S株) | 対応(かぶミニ) |
\ 取扱銘柄数No.1/ | \ NISA開設数No.1 / |
、楽天証券決算説明書(2024.2.9)https://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/disc_PDF/kessann_20240209_01.pdf
※2024/6/29時点
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