新NISAの記事を見るとどの情報媒体でも「オルカン(全世界株式)」と「S&P500」がおすすめされていることに気づくでしょう。
そこでこのように思うはず。
オルカンとS&P500は結局どっちを買えばいいの?
この記事ではオルカン(全世界株)とS&P500の概要について初心者にもわかりやすく解説し、最終的に「どっちを買えばいいの?」という疑問に対しては「両方買えばいい」という結論とそれに至る根拠を示したいと思います。
⚠︎当記事では以下、全世界株式=オルカンと記載します。
この記事では「オルカンとS&P500の比較」、「オルカンとS&P500はどっちを買った方がいいか」、「オルカンとS&P500のおすすめ投資信託」の順で私の考えを紹介します。
この記事を読めば、「両方買う」メリットについて理解できるようになり、皆さんの投資判断の参考になるでしょう。
私は2019年からNISAを取り組み、
現在、1000万以上の投資を行っています。
私は下の画像のようにオルカンとS&P500をどちらも保有していますのでその経験をお伝えします。
オルカンとS&P500の比較
まず、オルカンとS&P500の概要については以下の表のとおり。
オルカン | S&P500 | |
---|---|---|
ベンチマーク | MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI) | S&P500 |
銘柄数 | 約2840社 | 約500社 |
構成国 | 全世界47カ国 | 米国のみ |
米国市場の 時価総額カバー率 | 約62% | 約80% |
構成銘柄の種類 | 大型株 | 大型株 |
主なETF | VT | VOO,IVV |
それでは以下の項目についてオルカンとS&P500を比較していきましょう。
- 構成国と銘柄数
- 構成比率
- リターン
- リスク
構成国と銘柄数の比較
オルカンとS&P500で大きく違うのは構成国です。
オルカンは投資先を先進国23カ国と新興国24カ国の合計47カ国と全世界をカバーしております。
一方、S&P500の投資先は米国のみの1カ国です。
また銘柄数もオルカンが約2840、S&P500が約500とオルカンの方が分散の効いた良い投資対象だと言えるでしょう。
ただし、オルカンは時価総額加重平均を採用しているため、採用基準からオルカンの中身は必然的に時価総額が大きい米国株の割合が大きくなっています。
以下の円グラフがオルカンの構成国の比率です。
米国株の比率は約62%となっており、オールカントリーという名前ですが、半分以上が米国株となっています。
よってオルカンとS&P500は中身の6割が一緒ということになりますね。
構成比率の比較
具体的な企業の構成比率を比較してみましょう。オルカンとS&P500の上位10銘柄および構成比率は以下の通り。
構成銘柄 | オルカン | S&P500 |
マイクロソフト | 3.9% | 6.9% |
アップル | 3.8% | 6.2% |
エヌビディア | 3.7% | 6.1% |
アマゾン | 2.2% | 3.7% |
メタ・プラットフォームズ | 1.4% | 2.3% |
アルファベット クラスA | 1.4% | 2.3% |
アルファベット クラスC | 1.2% | 1.9% |
バークシャーハサウェイ | – | 1.7% |
イーライリリー | 0.9% | 1.5% |
台湾セミコンダクター | 0.9% | – |
ブロードコム | 0.8% | 1.3% |
上位10銘柄合計 | 20.2% | 33.9% |
オルカンもS&P500も上位10銘柄は9銘柄重複しており、ほとんど差がないことがわかりますね。
唯一、「台湾セミコンダクター」は時価総額は高いのに米国株ではないため、S&P500には含まれておりません。
銘柄は9銘柄同じですが、比率が異なります。
オルカンの上位10銘柄の比率はS&P500よりそれぞれ0.5-3.0%低くなっており、上位10銘柄に投資する割合も約13.7%程度低くなっています。
S&P500の方がオルカンより今勢いのある米国ビッグテックに集中投資できることとなります。
オルカンの場合、4割を米国以外に投資しており、銘柄数も多いため、S&P500よりも上位10名柄の比率は低くなります。
リターンの比較
投資において最も重要な要素の1つがリターンです。
オルカンとS&P500では過去どちらの方がリターンが良かったのでしょうか。
結論:切り取る期間によって変わる
直近10年ではS&P500、2000年代ではオルカンがよい
直近10年(2014年〜2024年)のリターン比較
直近10年間(2014年〜2024年)のチャートをみてみましょう。
※全米株式に連動したETF=VT(緑線)、S&P500に連動したETF=VOO(青線)
直近10年ではVOO(S&P500)のほうが、VT(オルカン)よりリターンがよかったという結果でした。
両者の差についてですが、VOOが232.6%、VTが124.2%と2倍近くの差がついているのは驚きですね。
2001年〜2010年のリターン比較
では、2014年前はどうなんだろうという疑問がでてくると思います。
2001年〜2010年までの年次リターンから算出した10年間のリターンは以下のグラフのようになっています。
※実際のチャートは見つけられなかったので、年次リターンのデータから10年間のトータルリターンを出しています。
2001年〜2010年ではACWI(オルカン)のほうが、S&P500よりリターンがよかったという結果でした。
2000年代(2001年〜2010年)は米国株の「暗黒時代」や「失われた10年」などと言われており、2000年初頭からはじまった「インターネットバブルの崩壊」や2008年に起こった「リーマンショック」により米国株は長期間低迷しました。
実際、S&P500の値をみると2001年年始を1とした場合の倍率は2010年末で0.81とリターンがマイナスになっているのがわかりますね。
一方、オルカンの方は2010年末で1.02とかろうじてプラスリターンとなっていることがわかります。ただし、ほぼゼロ成長なのでS&P500と同じように低迷しています。S&P500と同じように低迷した理由はオルカンの中身がS&P500と約6割一緒であるためです。
しかし、総じてプラスリターンになった要因は2000年から始まった新興国ブームにより、新興国株のリターンがよかったためだと考えられます。
この年代のリターン比較はあまりネットに載っていないので驚かれた人もいるでしょう。
リスクの比較
リターンと同じくらい重要なのがリスクです。
株のリスクとは値動きの幅のことです。
値動きが激しいと値動きが気になって投資を続けられないので新NISAのような資産形成のための投資ではリスクのなるべく低いものに投資をしましょう。
オルカンとS&P500ではどっちがリスクが高いのでしょうか?
結論:ほぼ同じ。値動き幅はS&P500のほうが若干大きい。
上記の結論は「ボラティリティ」と「最大ドローダウン」の比較から言えます。
ボラティリティの比較
値動きの幅はボラティリティという指標で表すことが一般的です。
ボラティリティは標準偏差を用いて、価格のばらつき度合いを表しています。
先ほどのリターン比較のチャートでは右側にVolatility(ボラティリティ)比較してます。結果は以下の通り。
直近10年の年率換算ボラティリティ | |
---|---|
VT(オルカン) | 17.1% |
VOO(S&P500) | 17.7% |
ボラティリティの意味するところはオルカンであれば1年で17.1%以下の値動きが68%の確率(標準偏差の性質)で起こることを示しています。
要は値動きの幅が1年で±17.1%である確率が高い(7割弱)ということ。
この結果から値動きの幅はほぼ同じ。S&P500はオルカンより若干ですがリスクが高く、値動きの幅が大きいことがわかりますね。
最大ドローダウンの比較
ボラティリティでは少しわかりにくいかもしれないので10年間の中での最大ドローダウンを比較しましょう。結果は以下の通り。
直近10年の最大ドローダウン | |
---|---|
VT(オルカン) | -34.2% |
VOO(S&P500) | -34.0% |
最大ドローダウンもほぼ同じですが、オルカンの方が若干大きいです。0.2%ではあまり気にならないかもしれませんね。
「ボラティリティ」と「最大ドローダウン」の指標を使い、両者のリスクを比較しましたが、総じてほぼ同じということがわかりました。
リスク比較についてはオルカンのほうが全世界に分散させているのだからS&P500よりもリスクが低いと思っていましたが、意外にもほぼ同じという結果になります。
オルカンとS&P500はどっちを買った方がいい?
結局、どっちを買った方がいいという疑問も対して、私なりの結論は以下の通りです。
結論:両方買えばいい。
このように考える理由は以下の通り。
- どっちか一方だけ買うリスクをマイルドにできる。
- リスクはほぼ同じなので両方買っても変わらない。
- 後悔や心配がなくなる。
どっちか一方だけ買うリスクをマイルドにできる。
なぜ両方買えばいいかというと、どっちか一方だけを買うと以下のリスクがあるからです。
皆さんはたぶん、このリスクを恐れて、どっちを買うか迷っているのでしょう。
S&P500を買わないリスク:直近10年のような米国株の上昇(オルカンの2倍近くのリターン)が続いた場合に株価上昇を享受できない。
オルカンを買わないリスク:2000年代のように米国株の長期低迷し、米国以外の国が株価上昇した場合に株価上昇を享受できない。
両方買うことで上記のリスクをマイルドにできると考えます。
たとえば、S&P500をメインにした場合、オルカンも少し買っておけば、今後米国株の長期低迷期となった際に米国以外の株価上昇を享受できます。
反対に、オルカンをメインにした場合、S&P500を少し買っておけば米国株の比率が上がり、直近10年と同じような米国株上昇が続いた際には米国株の株価上昇をより享受できます。
反対意見として自分が信じたシナリオになった場合にリターンが中途半端になるということですが、非常に優良なインデックスファンドであるオルカンとS&P500を買っている時点で、どちらのリターンに寄っても御の字になのかなと考えます。
リスクはほぼ同じなので両方買っても変わらない。
前の章でオルカンとS&P500のリスクを比較しましたが、以下の通りほぼ同じです。
直近10年の年率換算ボラティリティ | |
---|---|
VT(オルカン) | 17.1% |
VOO(S&P500) | 17.7% |
直近10年の最大ドローダウン | |
---|---|
VT(オルカン) | -34.2% |
VOO(S&P500) | -34.0% |
リスクはほぼ同じなので両方買ってもリスクに変化はありません。
後悔や心配がなくなる。
感情論ですが、オルカンとS&P500を両方買えば、後悔や心配がなくなるという点です。
オルカンとS&P500を両方買えば、米国株上昇し続けるシナリオでも、米国株以外が上昇するシナリオ、どちらのシナリオになっても、100%はずすことがなくなり、後悔がなくなります。
また両方買っておけば、自分が信じたシナリオと逆のシナリオになったらどうしようという心配がなくなり、日頃から株価を気にしなくて良くなります。
心配がなくなり株価を気にしなくなるとちょっとした株価下落時の狼狽売りがなくなり、株を長期で保有できるようになります。
インデックス投資の場合、長期保有すればするほど、負けることがなくなり、資産が確実に増えることが知られています。
その根拠となるのが以下の図になります。以下の図はS&P500指数(ドル建て)の投資期間と年平均リターンのちらばり方を表したものです。
上記の図の通り過去の実績では15年間以上保有し続けた場合、1950年〜2017年のどの期間でも年平均リターンがプラスになったということを表しています。つまり15年間保有し続けられた人は皆、プラスリターンとなり、負けなかったのです。
一方、10年以下で売ってしまった場合、マイナスリターンとなったケースがあるという結果になっています。
過去の実績なので未来も必ずしも同じにあるとは限りませんが、過去60年以上の膨大なデータによる結果であるため、未来の予想としては十分参考になるデータであると考えられます。
したがって長期保有するためにオルカンとS&P500を両方買っておいて後悔や心配を減らすことが有効だと考えます。
オルカンとS&P500のおすすめ銘柄
オルカンとS&P500、両方を買った方がよいと言いましたので、何を買えばよいのかおすすめの銘柄を紹介します。
銘柄選びはとても重要なので、ぜひ参考にしてください。
オルカンとS&P500に連動した商品を買うにはETFと投資信託という2つの買い方がありますが、新NISAで買うなら投資信託をおすすめしています。
投資信託をおすすめする理由は以下の通り。
それではオルカンとS&P500に投資できるおすすめの投資信託を紹介します。
オルカンのおすすめ投資信託2選
オルカンのおすすめ投資信託を紹介します。
オルカンのおすすめ投資信託はこの2つのファンドになります。
基本的には純資産約4兆円にも達する大人気の投資信託であるeMAXIS Slim全世界株式をおすすめしております。信託報酬率も投資信託の中で最安クラスの0.05775%と優良なインデックスファンドです。
しかし、2023年10月、このeMAXIS Slimに対抗すべき、楽天が「楽天・オールカントリー株式インデックスファンド」を発売しました。
信託報酬率もよりも安い0.0561%を謳っており、信託報酬率最安のオルカンファンドになりました。
6ヶ月騰落率もと大差ないので優良な投資ファンドというのがわかります。まだ1年たっていないので実質コストはまだわかりませんが、楽天証券ユーザーであれば、購入を検討する余地がある商品になるでしょう。
また投資信託保有ポイントもつきます。
実質コストがわかる2024年10月頃が楽しみですね。
S&P500のおすすめ投資信託3選
次に、S&P500のおすすめ投資信託3選から紹介します。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
圧倒的な人気で純資産額は4兆円に達しています。
信託報酬率も最安レベルの0.9372%となっており、販売会社も幅広く、新NISAの米国株派の大本命でしょう。
純資産額がこれだけあれば、信託報酬率の引き下げも期待できますね。
SBI・V・S&P500 インデックスファンド
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の次に人気な投資信託です。低コストで人気なSBI証券のSBI・Vシリーズです。
信託報酬率が最安レベルの0.938%であり、隠れコストも含めた実質コストも0.1%と現状、最安となってます。
3ヶ月の騰落率がeMAXIS Slimや楽天より少し劣るのが少し気になります。これは現金比率が他の2つのファンドより多い(0.3%が現金)というのが要因と考えております。下落局面ではこの現金比率がよい方向に働くでしょう。
ちなみに私はこのファンドの実質コストの安さに魅力を感じ、投資しております。
楽天・S&P500インデックスファンド
このファンドは2023年12月に信託報酬の引き下げを行い、S&P500の投資信託の中で最安の信託報酬率0.77%となりました。価格競争の結果、このような低コストのファンドができるのは投資家として喜ばしいです。
販売会社が楽天証券のみなので楽天証券の方はこのファンドを選ぶのがよいでしょう。
ただし、発売から1年未満のファンドのため、隠れコストを含めた実質コストがわかっていません。その点は考慮する必要があります。
投信保有ポイントを侮るべからず
投信保有ポイントは投資信託を保有しているだけでポイントがもらえる制度です。
SBI証券であれば「投信マイレージ」、楽天証券であれば「投信残高ポイントプログラム」という呼ばれるものです。
このポイントは0.03%程度のものですが、保有しているだけで毎月もらえるので侮ってはいけません。
100万円保有していると毎月300円、1000万円保有すると毎月3000円ですので資産が大きくなるほどポイントがザクザク溜まります。
信託報酬率0.1%以下の低コストなインデックスファンドを選ぶ際には0.03%程度のポイントでもその優劣に大きく影響します。
投信保有ポイントを考慮すると実際のコストが変わるのでファンドを選ぶ際にはポイントを差し引いたコストで考えましょう。
【新NISA】オルカンとS&P500で迷うなら両方買えばいい! まとめ
以上、「オルカンとS&P500の比較」、「結局どっちを買えばよいか」、「オルカンとS&P500のおすすめ銘柄」を記事にしました。
最後にこの記事で紹介した内容をまとめてみましょう!
オルカンとS&P500の比較
- 構成国:オルカンは世界47カ国、S&P500は米国1国
- 構成銘柄数:オルカンは2840、S&P500 は500
- 構成比率:上位10銘柄中、9銘柄が同じ。ただし、上位10銘柄に投資する割合も約13.7%S&P500の方が大きい。
- リターン:直近10年ではS&P500、2000年代ではオルカンがよい
- リスク:ほぼ同じ。S&P500のほうが若干高い(S&P500 17.7%、オルカン17.1%)
オルカンとS&P500には上記のような違いがありました。
結局、オルカンとS&P500のどっちを買ったほうがいい?という問いに対しては以下の通り。
このように考える理由は以下の通り。
- どっちか一方だけ買うリスクをマイルドにできる。
- リスクはほぼ同じなので両方買っても変わらない。
- 後悔や心配がなくなる。
特にこの記事で伝えたかったのは「後悔や心配がなくなる」という点です。
おさらいになりますが、両方買っておけば、自分が思い描いたシナリオにならなくてもリスクを回避しているので後悔や心配がなくなります。後悔や心配がなくなり、株価を気にしなくなるとちょっとした株価下落時の狼狽売りがなくなり、株を長期で保有できるようになります。
ぜひ、オルカンとS&P500で迷っている人は両方買って、後悔や心配をなくしましょう。
次にこの記事で紹介したおすすめ銘柄をおさらいしましょう。
・eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)
→純資産約4兆円の大人気ファンド、信託報酬率0.05775%と最安クラス、実質コスト最安の0.131%
・楽天・オールカントリー株式インデックスファンド
→eMAXIS Slimよりも信託報酬率が安く、最安の0.0561%。1ねん未満のため、実質コストは不明。
・eMAXIS Slim米国株式 (S&P500)
→信託報酬率:最安レベルの0.9372%、販売会社も幅広く、新NISAの米国株派の大本命
・SBI・V・S&P500 インデックスファンド
→実質コストが最安の0.10%、騰落率が2つのファンドに劣る
・楽天・S&P500 インデックスファンド
→信託報酬率が最安の0.77%、新しいファンドで実質コストは不明
オルカンとS&P500、両方を買った方がよいと言いましたが、何を買えばよいのかわからない人は上記の投資信託がおすすめです。
当ブログでは情報発信という形で皆さんの資産形成を応援しています。
皆さんのお役に立つような記事を今後も書いていきたいと思いますので、どうぞみにきてください。
最後に、この記事でも紹介した投信保有ポイントは証券会社で変わってきます。
下の記事ではおすすめの証券会社について紹介しているので参考にしてみてくださいね。
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