新NISAを始めようとした方は有名な米国株指数である「S&P500」に連動した投資信託を買おうとするでしょう。
しかし、知的好奇心が旺盛な方は調べている間にS&P500に似た「全米株式(CRSP)」という指数を見つけると思います。
そこでこのような疑問がでてくるでしょう。
S&P500と全米株式はどっちを買えばいいの?
この記事はS&P500と全米株式の違いについて初心者にもわかりやすく解説します。
この記事の前半部分では「S&P500と全米株式の違い」を解説、後半部分では「S&P500と全米株式のおすすめ投資信託」を紹介します。
この記事を読めば、新NISAでS&P500と全米株式どちらに投資するか、どの投資信託を買うかの参考になると思います。
私は2019年からNISAを取り組み、
現在、1000万以上の投資を行っています。
私は下の画像のようにS&P500と全米株式をどちらも保有していますのでその経験をお伝えします。
S&P500と全米株式の違い
それではS&P500と全米株式の違いについて解説します。
S&P500と全米国株の概要については以下の表のとおり。
S&P500 | 全米株式 | |
---|---|---|
ベンチマーク | S&P500 | CRSP US トータルマーケット インデックス |
銘柄数 | 約500社 | 約4000社 |
米国市場の 時価総額カバー率 | 約80% | 約100% |
構成銘柄の種類 | 大型株 | 小型〜大型株 |
主なETF | VOO,IVV | VTI |
全米株式のベンチマークは「CRSP US トータルマーケットインデックス」という長くて難しい名前の指数になってます。ETFのVTIの方が有名でしょう。
銘柄数と時価総額カバー率の比較
S&P500と全米株式(CRSP)で大きく違うのは銘柄数です。
S&P500は米国市場全体の上位500社の大型株のみで構成されており、全米株式は米国市場のほぼ全ての会社をカバーしており約4000社で構成されています。
米国市場の時価総額カバー率はS&P500では80%であり、全米株式では約100%となります。
イメージでいうとこんな感じ。
驚くべきはS&P500は500社だけで米国市場時価総額の80%を占めていることです。
全米株でカバーしている4000社のなかでの3500社は20%の影響度しかないということになります。
よってS&P500と全米株式は中身の8割が一緒ということになりますね。
しかし、全米株はS&P500がカバーしていない20%の小型〜中型株を含んでいるという点に違いがあります。
構成比率の比較
S&P500と全米株式の上位10銘柄および構成比率は以下の通り。
構成銘柄 | S&P500 | 全米株式 |
マイクロソフト | 7.19% | 6.24% |
アップル | 6.18% | 5.42% |
エヌビディア | 4.57% | 3.77% |
アマゾン | 3.76% | 3.34% |
アルファベット | 3.55% | 3.04% |
メタ・プラットフォームズ | 2.55% | 2.21% |
バークシャー・ハサウェイ | 1.74% | 1.52% |
イーライリリー | 1.41% | 1.31% |
ブロードコム | 1.34% | 1.17% |
テスラ | 1.31% | 1.11% |
上位10銘柄合計 | 33.6% | 29.13% |
構成比率はS&P500と全米株式ともに、時価総額加重平均を採用、その時代に勢いがある大型株を株価に反映できるメリットがあります。
全米株式の上位10銘柄の比率はS&P500よりそれぞれ1%弱低くなっており、上位10銘柄に投資する割合も約5%程度低くなっています。
これは全米株式がS&P500にはない下位3500社に分散投資しているためです。
そのため、全米株式の方がS&P500よりも広く分散された指数であるといえるでしょう。
リターンの比較
投資において最も重要な要素の1つがリターンです。
S&P500と全米株式では過去どちらの方がリターンが良かったのでしょうか。
結論:切り取る期間によって変わる
直近10年ではS&P500、直近20年では全米株式がよい
直近10年のチャート
直近10年間のチャートをみてみましょう。
※全米株式に連動したETFのVTI=Portfolio(緑線)、S&P500に連動したETF=IVV(青線)
直近10年ではIVV(S&P500)のほうが、VTI(全米株式)よりリターンがよかったという結果でした。
直近20年のチャート
では切り取る期間を変えて直近20年での結果をみてみましょう。
※全米株式に連動したETFのVTI=Portfolio(緑線)、S&P500に連動したETF=IVV(青線)
上のチャートから分かるように直近20年ではVTI(全米株式)のほうがIVV(S&P500)よりリターンが良かったという結果でした。
1年ごとのリターン比較
切り取る期間によってリターンの優劣が変わりましたね。
ここで1年ごとのリターン比較をみておきましょう。下の表はVTIを基準に±を示しています。
上の表から2020年までは全米株式が優勢ですが、2021年以降はS&P500が全て勝っていることがわかりますね。
よって切り取る期間を過去にすれば全米株式、最新になればなるほどS&P500のリターンが良くなります。
リスクの比較
リターンと同じくらい重要なのがリスクです。
株のリスクとは値動きの幅のことです。
値動きが激しいと値動きが気になって投資を続けられないので新NISAのような資産形成のための投資ではリスクのなるべく低いものに投資をしましょう。
S&P500と全米株式ではどちらがリスクが高いのでしょうか?
結論:全米株式の方がS&P500よりリスクが高い
上記の結論はボラティリティと最大ドローダウンの比較から言えます。
ボラティリティの比較
値動きの幅はボラティリティという指標で表すことが一般的です。
ボラティリティは標準偏差を用いて、価格のばらつき度合いを表しています。
先ほどのリターン比較のチャートでは右側にVolatility(ボラティリティ)比較してます。結果は以下の通り。
直近20年の年率換算ボラティリティ | |
S&P500 | 18.9% |
全米株式 | 19.2% |
ボラティリティの意味するところは全米株式であれば1年で19.2%以下の値動きが68%の確率(標準偏差の性質)で起こることを示しています。
要は値動きの幅が1年で±19.2%である確率が高い(7割弱)ということ。
この結果から全米株式はS&P500より若干ですがリスクが高く、値動きの幅が大きいことがわかりますね。
最大ドローダウンの比較
ボラティリティでは少しわかりにくいかもしれないので20年間の中での最大ドローダウンを比較しましょう。結果は以下の通り。
直近20年の最大ドローダウン | |
S&P500 | -55.22% |
全米株式 | -55.45% |
ほとんど変わりませんが、全米株式の方が若干、最大ドローダウンも大きいです。0.2%ではあまり気にならないかもしれませんね。
ボラティリティと最大ドローダウンを比較しましたが、総じて全米株式の方がS&P500よりリスクが高いことがわかりました。
S&P500と比較すると全米株式の方が小型株が含まれているので財政的に不安定でリスクが高くなると考えられます。それに比べS&P500は安定した大企業しか含まれていないのでリスクが小さくなります。
S&P500と全米株式はどっちを買った方がいい?
結局、どっちを買った方がいいという疑問ですが、私なりの結論は以下の通りです。
結論:あまり変わらないので好きな方を買えばいい
ただし、強いていうならリスクの低いS&P500を買った方がよい
S&P500と全米株式(CRSP)の比較まとめ
前項までのS&P500と全米株式の比較をまとめます。
- 構成銘柄:S&P500は大企業500社、全米株式は小型〜中型を含む4000社
- リターン:直近10年ではS&P500、20年では全米株式がよい
- リスク:若干全米株式が高い
リターンの比較をすると、最近ではS&P500の方がよいですが、過去は全米株式のほうがよいので、どちらがよいとは一概に言えないという結果です。
リスクの比較をすると全米株式のほうがS&P500より若干リスクが高いというデメリットがあるため、一般的にはS&P500のほうがいい指数であると言えます。
よって一般的にはリスクの低いS&P500を買った方がいいでしょう。
ただし、あまり変わらないので好きな方を買ってもいいと思います。
著名人の意見
S&P500と全米株式のどちらを買った方がいいのか決められないのであれば著名人他の意見も参考にしてみてはどうでしょうか。
ウォーレン・バフェット氏
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏はS&P500への投資を推奨しています。
自身が経営する「バークシャー・ハサウェイ」の株主に送った2013年の「株主への手紙」の中では以下のように書いてます。
私から管財人へのアドバイスはこれ以上ないほどにシンプルです。「10%の現金で米国短期債を買い、残りの90%の現金でS&P500に連動する非常に低コストの(バンガード社の)インデックスファンドを買うこと」
出典元:https://www.berkshirehathaway.com/letters/2013ltr.pdf
上記のように万人に推奨するのは資産の90%をS&P500に投資せよというものでした。
厚切りジェイソン氏
厚切りジェイソン氏はお笑い芸人でありながら、IT企業の役員をしており、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成している実績があります。
また2021年に著書「ジェイソン流お金の増やし方」を出版し、半年で50万部を出版されています。
ZAiオンラインサイトでのインタビューでは以下のように発言してます。(一部抜粋)
Q:数あるインデックス型商品の中で、なぜVTIをえらんだのですか?
A:理由の1つはリスクの分散になるから。たしかに、米国株の指数だけでもNYダウやS&P500などがある。ただ、組入銘柄が前者は30、後者は500。対してVTIが連動するCRSP指数は約4000。VTIを買えば米国市場のほぼ全体に分散投資しているのと同じなんだ。
もう一つの理由は成長性があるから、CRSPには中小企業も含まれている。中小企業がいいのは、将来、飛躍的に生業するチャンスがあること。その中から「未来のアップル」が生まれて大きなリターンを生み出してくれるかもしれない。
私も厚切りジェイソン氏の考えと近いものがあり、成長性のある全米株式の投資比率が高いです。
S&P500が人気なのでそれに反逆精神を持っているというのが本音かもしれません。
S&P500と全米株式のおすすめ銘柄
S&P500と全米株式に連動した商品を買うにはETFと投資信託という2つの買い方がありますが、新NISAで買うなら投資信託をおすすめしています。
投資信託をおすすめする理由は以下の通り。
それではS&P500と全米株式に投資できるおすすめの投資信託を紹介します。
S&P500のおすすめ銘柄3選
まずは、S&P500のおすすめ銘柄3選から紹介します。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
圧倒的な人気で純資産額は4兆円に達しています。
信託報酬率も最安レベルの0.9372%となっており、販売会社も幅広く、新NISAの米国株派の大本命でしょう。
純資産額がこれだけあれば、信託報酬率の引き下げも期待できますね。
SBI・V・S&P500 インデックスファンド
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の次に人気な投資信託です。低コストで人気なSBI証券のSBI・Vシリーズです。
信託報酬率が最安レベルの0.938%であり、隠れコストも含めた実質コストも0.1%と現状、最安となってます。
3ヶ月の騰落率がeMAXIS Slimや楽天より少し劣るのが少し気になります。これは現金比率が他の2つのファンドより多い(0.3%が現金)というのが要因と考えております。下落局面ではこの現金比率がよい方向に働くでしょう。
ちなみに私はこのファンドの実質コストの安さに魅力を感じ、投資しております。
楽天・S&P500インデックスファンド
このファンドは2023年12月に信託報酬の引き下げを行い、S&P500の投資信託の中で最安の信託報酬率0.77%となりました。価格競争の結果、このような低コストのファンドができるのは投資家として喜ばしいです。
販売会社が楽天証券のみなので楽天証券の方はこのファンドを選ぶのがよいでしょう。
ただし、発売から1年未満のファンドのため、隠れコストを含めた実質コストがわかっていません。その点は考慮する必要があります。
全米株式(CRSP)のおすすめ銘柄2選
次に全米株式のおすすめ銘柄を紹介します。
全米株式(CRSP)に連動した投資信託はS&P500に比べ数が少なく、おすすめはこの2つのファンドになります。
もともとは「楽天・全米株式(愛称:楽天VTI)」しか全米株式に連動した優良な投資信託がありませんでしたが、2019年9月に信託報酬が0.0938%とさらに安いの「SBI・V ・全米株式」が発売されました。
コストだけみればSBI・V・全米株式のほうが優良な投資信託でしょう。
ただし、1年騰落率を見ると楽天・VTIの方が優秀ですので、どちらも甲乙つけ難いです。
SBI・V・全米の方は楽天証券では販売していないので楽天証券の方は楽天・VTIのみとなります。
楽天・VTIはかなり有名で厚切りジェイソンさんもおすすめしていたここともあり純資産額が1兆超の大人気投資信託です。
投信保有ポイントを侮るべからず
投信保有ポイントは投資信託を保有しているだけでポイントがもらえる制度です。
SBI証券であれば「投信マイレージ」、楽天証券であれば「投信残高ポイントプログラム」という呼ばれるものです。
このポイントは0.03%程度のものですが、保有しているだけで毎月もらえるので侮ってはいけません。
100万円保有していると毎月300円、1000万円保有すると毎月3000円ですので資産が大きくなるほどポイントがザクザク溜まります。
信託報酬率0.1%以下の低コストなインデックスファンドを選ぶ際には0.03%程度のポイントでもその優劣に大きく影響します。
投信保有ポイントを考慮すると実際のコストが変わるのでファンドを選ぶ際にはポイントを差し引いたコストで考えましょう。
S&P500投資信託のコスト比較(投信保有ポイント考慮)
投信ポイントはeMAXIS Slimが大きく、実質コストはSBI・Vに負けているものの、投信保有ポイントを考えるとeMAXIS Slimの方がコストが安いという結果になりましたね。
また投信保有ポイントはSBI証券と松井証券で多くもらえ得ることがわかったでしょう。
楽天については隠れコストが見えていないものの、0.05%以下となりコスト最安のファンドになりそうです。
楽天証券で新NISA口座を解説している人はこのファンドでよいと思います。
全米株式(CRSP)投資信託のコスト比較(投信保有ポイント考慮)
全米株式の方はコストでいうと投信保有ポイントを考慮しても「SBI・V ・全米株式」の方が有利であることがわかりました。
意外なのは「楽天・全米株式」は楽天証券では投信保有ポイントがもらえないということです。
楽天・全米株式に投資するならSBI証券や松井証券から投資するのがいいでしょう。
【新NISA】S&P500と全米株式どっちがいい? まとめ
以上、「S&P500と全米株式の違い」と「S&P500と全米株式のおすすめ銘柄」を記事にしました。
最後にこの記事で紹介した内容をまとめてみましょう!
S&P500と全米株式の比較
- 構成銘柄:S&P500は大企業500社、全米株式は小型〜中型を含む4000社
- リターン:直近10年ではS&P500、20年では全米株式がよい
- リスク:全米株式のほうが高い(S&P500 18.9%、全米株式 19.2%)
S&P500と全米株式には上記のような違いがありました。
リターンやリスクの差はごくわずかであり、「S&P500と全米株式のどっちを買った方がいい?」という疑問にはこう答えます。
次にこの記事で紹介したおすすめ銘柄をおさらいしましょう。
・eMAXIS Slim米国株式 (S&P500)
→信託報酬率:最安レベルの0.9372%、販売会社も幅広く、新NISAの米国株派の大本命
・SBI・V・S&P500 インデックスファンド
→実質コストが最安の0.10%、騰落率が2つのファンドに劣る
・楽天・S&P500 インデックスファンド
→信託報酬率が最安の0.77%、新しいファンドで実質コストは不明
・SBI・V・全米株式 インデックス・ファンド
→CRSPに連動したファンドでは実質コスト最安の0.11%
・楽天・全米株式 インデックス・ファンド
→SBIよりも騰落率がよい。実質コストは若干高めの0.186%
今回紹介したS&P500、全米株式どちらかに投資するにせよ、新NISAでは両ファンドとも投資のメインにするべき投資先になります。
当ブログでは一貫して新NISAではよりリスクの少ないオルカンや今回紹介したS&P500、全米株式などのインデックス投資をメインにすることをおすすめしています。
新NISAで最も再現性高く、勝率が高い方法は相場から降りず、長期で居続けることです。
よってあまりリスクを取りすぎず、S&P500や全米株式のようなファンドを愚直に積み立てることを提案します。
リスクが高い投資先をメインにしないようにだけ、忠告しておきます。
最後に、記事で紹介した投信保有ポイントは証券会社で変わってきます。
下の記事ではおすすめの証券会社について紹介しているので参考にしてみてくださいね。
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