2024年から新NISAが始まり、「オルカン」こと「eMAXIS Slim オールカントリー」が各証券会社の投資信託ランキングで常に1位を獲得しており、大人気です。
しかし、実のところ、自分が投資している「オルカン」の中身を知らない人が多いのでは?
自分が投資している商品について理解が足りないと暴落や不況がきた時に不安になり狼狽売りしてしまいます。
インデックス投資で重要な相場から降りず、長期で居続けることができなくなってしまうのです。
2024年2月29日、オルカンのベンチマークである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」の構成銘柄の入替が発表されました。
なんと、オルカンから外れる101銘柄のうち66銘柄が中国企業であり、その一方で新たに追加されるのがインド企業です。
今回はこのニュースを皮切りにオルカンの中の中国とインド企業に特化した記事になっています。
今回の入替で中国の割合が少なくなったけど、中国は世界第2位の経済大国だし、オルカンの割合はまだまだ多いんじゃないの?
実はオルカンでの中国の割合はもともと少ないし、
今回の入替でさらに少なくなったんだ。
具体的な中国とインド企業の割合はこの記事で詳しく解説するね!
この記事の前半部分では「オルカンの概要」を解説、後半部分では「オルカンの中の中国とインド企業」を紹介します。
この記事を読めば、自分が投資しているオルカンの中身がわかるようになり、より投資握力(狼狽売りしない力)が高まりますよ。
私は2019年からNISAを取り組み、
現在、1000万以上の投資を行っています。
下画像の通り、オルカンへの投資もしております。
今回は中国企業とインド企業にスポットをあててみました。
オルカンの概要
まずオルカンについて解説します。
オルカンとは
オルカンとは
三菱UFJアセットマネジメントが運用している投資信託の1つで
eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)の略語
概要は以下の通り。
オルカン | |
---|---|
正式名称 | eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー) |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント |
ベンチマーク | MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス (配当込み、円換算ベース) |
純資産額(2024/4/24時点) | 3兆750億円 |
信託報酬率 | 0.05775% |
ベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」で先進国23カ国と新興国23カ国の大型株、中型株で構成された指数です。
オルカンはこのACWIの配当込み、円換算ベースに連動した投資成果を目指して運用しています。
新NISAが始まったこともあり、純資産額は3兆円を超え、売れに売れているファンドになります。
人気の理由は「世界分散投資ができること」と「0.5775%という信託報酬の安さ」にあると思います。
オルカンの国別構成比率(入替前)
オルカンの国別構成比率は以下の通り。
オルカンは全世界に分散投資しているのですが、アメリカだけで62.3%ということで、ほとんどアメリカに投資しているというのがわかりますね。
今回の入替前の割合ですが、世界2位の経済大国である中国はなぜか3.2%しかありません。インドはさらに少なく、1.7%しかありません。
なぜこのような比率となるのか?
オルカンは時価総額加重平均を採用しているから。
時価総額加重平均とは時価総額が大きい企業に多く投資する仕組みのことです。
時価総額という考え方では中国やインドが米国よりも小さいため投資比率が少なくなってしまいます。
例えば世界の時価総額ランキングを見てみましょう。
上のランキングの通り、ランキング上位のほとんどが米国企業であり、中国は「テンセント」が23位、「貴州茅台酒」が29位と2社のみとなります。
さらに1位の「アップル」と29位の「貴州茅台酒」の時価総額を比較すると10倍近く違います。
つまりランキング上位が世界の時価総額のほとんどを占めており、その企業がほとんど米国であるため、時価総額加重平均を採用している「オルカン」では米国の比率が大きくなり、中国やインドの比率が小さくなります。
ファンドの仕組み
ベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」ということですが、
下の図の通り、外国株(先進国株)、新興国株、日本株の3つのマザーファンドに投資しながら、ベンチマークの「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」の成績を目指しています。
国別比率からわかるように以下の比率で投資しています。
組入ファンド | マザーファンド名 | 組入比率 |
---|---|---|
外国株式 インデックスマザーファンド | MSCI コクサイ・インデックス | 83.7% |
新興国株式 インデックスマザーファンド | MSCI エマージング・マーケット・インデックス | 10.7% |
日本株式 インデックスマザーファンド | MSCI ジャパン・インデックス | 5.5% |
中国とインドは「新興国株式」に分類されるため、皆さんが「オルカン」に投資したお金は「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」経由で中国とインドに投資されます。
2024年2月のオルカンの構成銘柄入替
2024年2月29日、世界の株式市場のバロメーターとされる「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」の構成銘柄が大幅に変更されました。
今回の入替は24銘柄の追加し、101銘柄を除外するという内容でした。
同じ「オルカン」を買っていても、今回のようにオルカンの中で国の経済状況の変化に合わせてインデックスの構成銘柄を自動的に変えてくれます。
伸びなそうなダメな企業は除外し、伸びそうないい会社を追加するというのを自動でやってくれるなんて最高ですね。
中国企業の除外
特にゼロコロナ政策からの回復鈍化と不動産市場の混乱の影響により中国市場の時価総額が大幅に減少したことを受け、ACWIは66社の中国企業を除外しました。
ACWIから除外された66社をセクター別に見ると以下の3つのセクターが比較的多くを占めています。
半導体および技術関連企業:3Peak, Beijing E-Hualu, Shanghai Fudan Microelectronicsなど
医療およびバイオテクノロジー企業:3SBio, Betta Pharma, BGI Genomicsなど
中国は除外が多いですが、さすがは中国、追加された銘柄も5社あります。
追加されたのは以下の5社です。
CM Expressway, Giant Biogene Holding, MGI Tech, Midea Group, Ningbo Sanxing
高速道路会社や美容, 健康製品開発企業、家電メーカー、スマートエネルギー制御装置製造会社などです。
中国は地政学的リスクや経済状況の悪化から世界中のマネーが引き上げられていっている気がしますね。
そのマネーがどこにいくかというと次に紹介するインドにシフトしています。
インド企業の追加
一方、インド株は今回のACWIの入替で除外はなく、5銘柄が追加されました。
ACWIに追加されたのは以下の5社です。
- Bharat Heavy:公共セクターのエンジニアリング会社、主にエネルギー分野に強み
- GMR Airports Infra:インフラストラクチャ企業、その名の通り世界中の主要空港の開発、運営に強み
- NMDC:インドの国営鉱業会社、主に鉄鉱石の生産と販売を実施
- Punjab National:インドの主要な公共セクター銀行
- Union Bank of India:インドの大手公共セクター銀行
やはり、インドのような新興国ではインフラ整備などの公共事業を実施する企業とこれをサポートする銀行事業が成長するのですね。
【オルカンの中身】中国とインドの割合
オルカンは「MSCIエマージング・マーケット・インデックス(EM)」を通して、中国とインドの企業の株式を購入していることを紹介しましたね。
ではこのEMの国別割合はどのように変わってきているのでしょうか。
下のグラフはEM内の国別割合の推移を示しています。
中国については2009年時点で15%程度でしたが、2020年まで急成長し、40%弱まで増加しました。
しかし、2020年以降は割合を下げ、2023年には30%程度になっていることがわかります。
2020年のコロナショック以降、ゼロコロナ政策からの回復鈍化と不動産市場の混乱の影響により風向きが変わってしまった感じですね。
一方、インドはというと2009年に7〜8%しかなかった割合が徐々に伸び、2023年には13〜14%程度まで増加していることがわかります。
インドは人口ボーナス期に入り、凄まじいGDP成長率を記録しています。それによる株価および時価総額の増加が顕著であり、それがEM内の割合増加に寄与しています。
インド株については以下の記事で詳しく紹介しております。気になる方は参考にどうぞ。
このように2020年以降、EM内の中国の割合減少、インドの割合増加は進んでおり、2024年2月の入替でもこの傾向が進みました。今後もこのトレンドは続くでしょう。
【オルカンの中身】中国とインドの具体的な銘柄
先ほど説明したファンドの仕組みの通り、オルカンの中の中国とインドには新興国株インデックスマザーファンドである「MSCIエマージング・マーケット・インデックス(EM)」を経由して投資されます。
EM内の上位20銘柄からオルカン内の中国とインドの具体的な銘柄を見てみましょう。
MSCIエマージング・マーケット・インデックスについて
MSCIエマージング・マーケット・インデックス(MSCI Emerging Markets Index)は、新興市場国の株式市場のパフォーマンスを測定するために設計された指数です。
1988年に設立され、当初は10の市場を含んでいましたが、現在は24の新興市場国に拡大しています 。
このインデックスは大型および中型の企業を対象にし、これらの国々で自由浮動株の市場資本化の約85%をカバーしており、1,379の構成銘柄があります 。
新興市場インデックスは、新興市場における投資機会の進化を反映し、投資家のグローバルおよび地域別の資産配分ニーズに応えることを目的としています。
このインデックスは、特に新興市場に焦点を当てた投資戦略にとって重要なベンチマークとなっています。
先ほど説明した通り、この指数がオルカンの10.7%を占めています。
MSCIエマージング・マーケット・インデックスの構成銘柄
この指数の上位20銘柄を見ておきましょう。
※EM:MSCIエマージング・マーケット
銘柄 | 国 | 比率( EM内) | 比率(オルカン全体) |
台湾セミコンダクター (Taiwan Semiconductor Mfg) | 台湾 | 6.69% | 0.716% |
テンセント (Tencent Holdings Ltd) | 中国 | 4.02% | 0.430% |
サムスン電子 (Samsung Electronics Co) | 韓国 | 3.88% | 0.415% |
アリババグループ (Alibaba Group Holding) | 中国 | 2.21% | 0.236% |
リライアンス・インダストリーズ (Reliance Industries) | インド | 1.29% | 0.138% |
PDDホールディングス (PDD HOLDINGS A ADR) | 中国 | 1.28% | 0.137% |
ICICI銀行 (ICICI Bank) | インド | 0.87% | 0.093% |
インフォシス (Infosys) | インド | 0.85% | 0.091% |
美団 (Meituan B) | 中国 | 0.84% | 0.090% |
SKハイニックス (SK HYNIX) | 韓国 | 0.82% | 0.088% |
中国建設銀行 (China Construction Bank H) | 中国 | 0.81% | 0.087% |
HDFC銀行 (HDFC Bank) | インド | 0.77% | 0.082% |
Vale ON | ブラジル | 0.77% | 0.082% |
Media Tek Inc | 台湾 | 0.67% | 0.072% |
Net Ease | 中国 | 0.64% | 0.068% |
アルラジヒ銀行 (Al Rajhi Banking & Investment) | サウジアラビア | 0.59% | 0.063% |
Hon Hai Precision Ind Co | 台湾 | 0.59% | 0.063% |
タタ・コンサルタンシー・サービシズ (Tata Consultancy) | インド | 0.57% | 0.061% |
サムスン電子優先株 (Samsung Electronics Pref) | 韓国 | 0.54% | 0.058% |
ペトロブラス PN (Petrobras PN) | ブラジル | 0.51% | 0.055% |
オルカンはこの「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」に全体の10.7%しか投資していないので上記企業のオルカン全体での比率はさらに小さくなり「EM内」の比率に10.7%をかけたものになります。
1番右にその比率を計算したものを載せました。
実際にオルカンを通じて新興国株企業に投資しているのは1番右の欄の比率になるでしょう。
中国なら「テンセント」や「アリババグループ」、インドなら「リライアンス・インダストリーズ」や「ICICI銀行」などがEMの上位であり、オルカンを構成する銘柄だということがわかりましたね。
オルカンの中身 中国の割合 まとめ
以上、「オルカンの概要」と「オルカンの中の中国とインド企業」をまとめました。
最後にこの記事で紹介した内容をまとめてみましょう!
- 「オルカン」はeMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)の略語
- オルカンのベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」
ただし、ACWIには直接投資しておらず、外国株(先進国株)、新興国株、日本株の3つのマザーファンドに投資している。 - 中国とインドのマザーファンドは「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」で投資比率は10.7%
- オルカンの国別比率は中国が3.2%、インドが1.7%(米国は62.3%)
- 2024年2月の入替は中国企業が66社除外、インドが5社追加。
- EM内の割合は2020年以降、中国が約30%減少傾向、インドが約14%で増加傾向であり、今後もこのトレンドは続く。
- EMの上位20銘柄を紹介。
いかがでしたでしょうか?
今回はオルカンの概要から特に中国とインド企業に特化してオルカンの中身を解説しました。
みなさんが投資している「オルカン」について理解が深まったと思います。
自分の投資した商品についてはよく理解し、暴落や不況がきた時にも相場から降りず、長期で居続けるようにしてください。
みなさんが選んだもしくは選ぼうとしている「オルカン」は現代ポートフォリオ理論からして最強の投資商品の1つだと思います。
オルカンは世界分散投資ということでリスク分散が効いております。また現在は米国の比率が多いですが、今後、米国以外が伸びた時は時価総額加重平均に従い、その国の投資比率を増やすのでは米国のみのS&P500よりはリスクが少ないでしょう。
今後も今回のように投資商品の中身を紹介する記事を書くのでよかったら見てきてください。そして自分の投資する商品について理解を深めて投資握力を高めていってくださいね。それが投資で成功する再現性の高い方法だと思います。
最後に、記事で紹介した「オルカン」に興味を持った方は新NISAを始めて間もない方もしくは新NISAを始めるか検討している方だと思います。
以下の記事でおすすめの証券会社を紹介しているので参考にしてみてくださいね。
コメント
コメント一覧 (2件)
信託報酬率 0.5775% という記載がありますが、0.05775% ではないでしょうか
管理人の矢五郎です。
この度はアクセスいただきありがとうございます。
0.5775%は誤記で0.05775%が正しいです。
先程、修正しましたが、反映に時間がかかるかもしれません。ご指摘ありがとうございました。